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「キャットバスターズ」のロゴ制作

Published at December 2, 2019 6:43 p.m.
Edited at December 4, 2019 10:43 a.m.

この記事はHappy Elementsカカリアスタジオ Advent Calendar 2019の4日目の記事です。


こんにちわ、HappyElements カカリアスタジオでグラフィックデザイナーをしているものです。
せっかくのアドベントカレンダーなので、ゲームに関する記事を書かせていただきます!

弊社では先日 「キャットバスターズ -collections-」 というアプリをリリースしました。
これは2018年にサービスを終了した「キャットバスターズ」の資料集的存在…いわゆる メモリアルアプリ です。
当時キャットバスターズを遊んでいただいていた方も、そうでない方も是非ダウンロードして遊んでみてください♪

さて、今回の記事ではそんな「キャットバスターズ」(以下、キャトバス)のロゴの制作過程を公開させていただきたいと思います。
「ゲームのロゴってどんな風に作ってるの?」という方や、この業界を目指される方の参考になれば幸いです。




【1】デザインのコンセプトを決める

ロゴを制作するタイミングは、組織やプロジェクトによって様々ですが、
キャトバスの場合、 ゲームが7〜8割完成してきたころにロゴに着手しはじめました。

しかし、いざ始めてみるとスタートから難航します。
それは、ゲーム自体の完成度が上がってきて、全体像が具体的に見えてきたからこそ、このゲームを構成する要素の多さも見えてきて、逆にコアの部分が見えづらくなっていたからです。

キャトバスは斬新なシステムも多く、それが逆に「具体的にこういうゲームです」と、このゲームの本質・セールスポイントを明確化する障害になっていたのです。


ロゴはゲームの看板と言えるモノなので、ひと目見ただけでゲームの肝の部分を伝えられることが重要です。

ゲームのセールスポイントが整理できていないと、良いロゴは制作できません。

前述しましたが、この時点のキャトバスには特徴となる要素がたくさんありました。

▼当時チームメンバーにヒアリングして出てきた「キャトバス」らしい要素
ひっぱり
戦略性
RTS
ランダム性
かわいい猫のデザイン
タイムマシン
たくさんの種類の猫
ショットとコンバットの二面性
ディフェンス要素
マルチプレイ
ごちゃ混ぜの世界

色々と整理された今だからこそ「こういうゲームでしょ」と言えますが、
開発が終盤になるにつれ、ユーザーに何を一番アピールしたいのかが、チーム内でもブレて来ていました。長期開発にありがちです。

そこで、ロゴに着手する前にまず、このゲームのコンセプトを改めて定義することにしました。



要素の洗い出しと、セールスポイントの整理

まずチームメンバーへのヒアリングを行い、その上でマインドマップを使って要素の洗い出しを行います。

この時、 「キャトバスってどんなゲーム?」と聞かれた時にどう説明しているか を意識して整理しました。
まだ具現化できていなくても、メンバーの中に「キャトバスってなんとなくこう」という共通イメージがあるのは感覚的に分かっていましたので、それを整理すれば必然的にこのゲームのアピールする部分が見えてくるのではないか?と考えたからです。



その結果、色々な要素がある中で一番に出てくるのは、
「かわいい猫のユニットを引っ張って、たくさん飛ばして戦うRPG」 という部分でした。



この部分を「ゲーム全体の売りポイント」と定義し、
その部分を中心にマインドマップで出ていた要素を繋いだり削ったりします。


その結果、キャットバスターズのロゴとしてのコンセプトは
「わらわらと動く可愛いネコ」「カッ飛びアクションRPG」 の2つの言葉で表現できそうという結論になりました。



SDで動く可愛く魅力的なネコが、RTS風のフィールドの中で自由に動き回り、ボールになってぶつかったり跳ね返ったりする勢いのあるイメージ

これが表現できていれば、ゲームの看板としてのロゴの役割は果たせるはず と考え、具体的なイメージの制作に入りました。



【2】アイデア出し/ラフスケッチ

ここからは具体的なロゴの制作についてです。

ロゴを作り始めるとき、取っ掛かりの方法は色々ありますが、個人的には 「既存のフォントから作り始める派」「0からレタリングする派」 の大きく2つの流派に分けられると思っています。

自分の場合、ロゴを作るときはなるべく既存のフォントを使わず 手描き で始めます。
理由は色々あるのですが、特に意識しているのはユニークネスです。

新商品は「新しい価値をもったモノ」なはずなので、それを表現するのに既成のフォントを使うのは、
作り手が自ら「これは○○みたいな商品ですよ―」と言っているような感覚になるからです。

フォントを使うと「それらしさ」は出るのですが、どうしても字形に因われてしまったり、何処かで見たようなロゴになってしまうので、あえてそこを狙わない場合はまずはフリーハンドで描きはじめます。

※最終的に既存フォントを使う場合も多いですが最初はアナログで手描きで始めます。
※勿論フォントから始めるのが悪いわけではなく、あえて「○○っぽさ」を狙う場合もあります。狙いや目的の違いです。

↑アイデアを出しながら「こういう要素が必要だな」みたいなのが固まってきます。
この時点でぼんやりと色の事であったり、質感のことを考えてます。

さっきのコンセプトを軸に

  • ゲームをプレイした時の感覚
  • ゲームを知らない人が受ける印象
  • 他のゲームと比較したときの印象
  • 細かい装飾のネタ

などを意識しながら、思いついたことを手が動くだけ描きます。
ノートとか手帳とかそのへんの裏紙とか、色んな所に描いてます。
あと、ずっと鉛筆だと飽きるので、ボールペンとか筆ペンに持ち替えたりもしてます。



このスケッチの時に考えていたキーワード

■手のひらの上に乗るような、小さな猫達がたくさんいるようなイメージ

  • コロコロと、2Dながら立体感のある印象
  • 規則正しく並びすぎていないワンパクな感じ

■ネコ感

  • 柔らかさやしなやかさ

■ひっぱりRPGというゲーム性

  • ファンタジーに寄せすぎない
  • カジュアル寄りのゲームなので、世界観よりゲーム性を表現する

「かわいいネコがワラワラ出てくる、爽快かっ飛ばしアクション!」 というところをこのゲームが伝えるべきポイントとして、第一に表現。

これがもっと世界観を重視したタイトル。例えば弊社の「メルクストーリア」や「ラストピリオド」なら、その世界観を強く表現するとおもいますが、それよりはもっとカジュアルなゲームだったので、ゲーム性を伝える事を重視して考えていました

また、ゲームの場合はロゴ単体で使う場面は少なく、イラストとセットで使うケースがほとんどです。
なので今回は、ロゴのなかにイラストを大きく使うアイデアは優先度を下げていました。



方向性を決めて、良さげなアイデアをラフ案として整理

スケッチで色々出したアイデアを整理して、いくつかの方向性にまとめます。
まとめられる部分はまとめつつ、コンセプトやゲーム性を表現できるものを探していきます。

ある程度自分の中で絞れてきたぐらいの段階で、ラフな形に起こしてチームメンバーとイメージのすり合わせを行います。

ラフをメンバーに見せる時に気をつけること
ラフ初校なんで、文字のバランスとか装飾とかはほとんど整えない。
立体感の有無とかも仮で、ここから大きく変わることもありますが「こういう大きな方向性を考えてますが、第一印象を聞かせてください」という感じで聞きます。
メンバーがイメージしている「キャトバスっぽさ」があるかどうかが判断のポイントとなります。

「もうちょっと早いタイミングで見せてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、あまりに手描きに近いラフの状態だと最終的なイメージがしづらく、ある程度デザイナーの中で方向性を決めてから出したほうが良い、と個人的には思ってます。(UIの場合は早め早めのプロトを出すべきだと思います。グラフィック勝負なところがあるロゴの場合は、です。)



決まった方向性

ラフの段階ではこちらの案になりました。
ただ同時に課題も出ていたので、そこら辺を踏まえてデザインを詰めていくことになります。

決め手
・キャトバスのネコユニットは、大きな耳が特徴
 (特にイラストレーターさんが描いたイラストのフサフサ感をロゴにも活かせている)
・小さなユニットがワチャワチャ戦うイメージを文字で表現できている
・ボール化して飛んでいく要素が装飾としていい塩梅で入ってる
課題
・文字がバラバラとした印象で、視線が安定しない
・「ネコ」「飛ぶ」というのは分かったが、単なる引っ張りゲーではなく、ストラテジー要素もあることを表現したい。


【3】本制作

ある程度ラフが固まったら、いよいよ本制作です。
ラフの時点で出ていた良さを残しつつ、課題を改善していきます。

ロゴを作るときは音便を考える

こういう文字がバラバラと並ぶロゴの場合、実際の音便と近いレイアウトにすると読みやすくなります
人は文字を読む時に脳内で音にするので、そこを意識するとよいかと。

「スッと流れるように読ませたい」とか「最初の1文字だけ強調して読ませたい」など、ロゴの形状で読み手の意識をコントロールしたりもできます。


「個」と「多」を意識した配色

メインキャラであるネコ博士を意識しつつ、
「CAT」が1匹のネコ、「BUSTERS」が沢山の猫 というイメージで、
言葉のイメージとワチャワチャ感を配色で表現。


左から右へ視線を流す

王道感を出すためのシンメトリー配置ですが、中央に重心が集まりすぎると重苦しいロゴになるので、
左から右へ視線を誘導することで、シンメトリーながら動きや元気さのある印象に。
(AとTの関係性を見るとわかりますが、あえて少しシンメトリーから崩してます)


白地ではなく、ゲーム画面やイラストとのバランスを重視

このままでも結構まとまってきました。
ですが、白地ではなくゲームのイラストなどと一緒に使用した時に、隙間が目立ち、ロゴとして埋もれてしまう印象でした。なので中央の隙間を埋める形で調整。
最後にイラストとの親和性を取るためにテクスチャなどを重ねていって完成です。



【4】完成

どうでしょう。「キャトバスらしい」ロゴが出来たかと思います。
あまりゲームのロゴメイキングって公開されることが無いですよね。
業界のデザイナーのみなさん!是非あなたのタイトルのメイキング解説をお願いします!



最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
HappyElements カカリアスタジオではこの様に、ロゴ1つにもこだわりを持って制作できるデザイナーを募集しています!

「京都はなんだか遠そうだし…」と立地的な懸念をされるかもしれませんが、関西の他の地域と比較しても大きな差はないですし、落ち着いていてとても住みやすい街です。引っ越しを伴うご転職もお待ちしています!
※ 引越支援金制度なども用意されています(詳しくは カカリアスタジオ採用サイトを参照ください)(2019年12月現在)

HappyElements カカリアスタジオ 採用特設サイト

カカリアスタジオのAdvent Calendar 2019はまだまも続きますので、明日以降も是非ご期待ください♪